3月2日の朝日新聞「ひと」欄に、「文学と気象を語る予報士 石井和子さん」 が取り上げられていた。
春の朗読会は桜前線が北上する前、4日、東京都内の寺で開く。選んだのは坂口安吾の「桜の森の満開の下」。その昔、満開の桜の妖気は山賊をも恐れさせたという。「桜の持つ不思議な力をつたえたい」
女性予報士キャスターの草分け。日本気象予報士会の2代目会長も務めた。文学の中の気象を語りたいと、5年前から年1回のペースで朗読会を続けている。晩秋に掘辰雄の「姨捨」を取り上げたたことがある。冬へ移ろう時雨がテーマだった。気象現象や言葉の由来を語ってから、物語に入る。宮沢賢治の「水仙月の四日」を題材にした時は、気象衛星の画像を交えて吹雪の世界を伝えた。
朗読が好きで、TBSのアナウンサーに。フリーに成ってからは、主にお天気番組を担当した。1994年に気象予報士試験が始まる前、うわさが流れた。「資格がないと仕事がなくなる」。猛勉強をして合格し、気象のおもしろさに引かれた。
予報士になってから、源氏物語を読み直した。野分き(台風)が過ぎて秋めく様子、京都特有の蒸し暑さと冬の底冷え。紫式部の気象の描写の正確さに驚いた。「よく観察してい、平安時代の天気図が浮かんでくるよう。光源氏や夕顔の心情と重なり物語を盛り上げている」
紫式部を「平安の気象予報士」と呼ぶ。「人は天気に気持ちを重ねたり、影響されたりする。人の感性は千年立っても変わらない」
銀遊句会では、会友の詳しい履歴経歴は語られない。御付き合いの中で少しづつ知れば良い、と言う事なのであろう、相変わらずミステリアスな方も多い。今回の様に、偶然に知る外からの情報も多い。思えば、素敵な方々の御集りの会なのである。
そしてもうひとつ、記事を書き写す事で知る、書き方の作法、息使いの違いが面白かった。書き取りの勉強が極めて有効、としみじみ思ったのである。