昨夜の十六夜の月は、大層美しかった。我家の一番の高木である槐(えんじゅ)の上枝(ほつえ)のはるか上に凛として白光を放っていた。12時に近い、真夜の十六夜の月である。
十六夜のせはしさ悲し真夜にあふ 幻椏
十六夜が過ぎると、立待月、居待月、臥待月、更待月、二十三夜、と続いていくが、週間天気予報を見ると曇りマークが多く、何度月を見る事が出来るか心許無い限りである。
毎日新聞朝刊の連載に、坪内稔典「季語刻々」がある。朝日新聞の「折々の歌」を真似た企画であったのだが、1面からいつの間にか後ろから3枚目の紙面に落ち着いた。とは言え、気にして毎日見ているのだが、9月29日のその蘭に、「
月に乾杯おひとり様の白ワイン 富田敏子」 の句を見つけた。
「白ワインに月光が差して素敵な光景だ。作者は1936年生まれ。<おひとりさま>は社会学者の上野千鶴子がはやらせた言葉。その上野、「男おひとりさま道」で書いている。「おひとりさまはひとりでいることが苦痛でなく、それを選択したひとのことだ」。意志的に選択して楽しむおひとりさま、それが今日の句のイメージだ。」 とのコメントが添えられている。
富田さんは、親しくお付き合い頂く俳句の先輩である。昨年第4句集「
天井飛花」を上梓なされている。上記の句はその句集の中の一句である事を私は知っていた。早速電話をして、毎日新聞掲載のお祝いを申し上げた。が、「え、何のこと・・」 とこの事実を全くご存知で無い。かえってその事に、私は吃驚した。すぐにコピーをしてお送りしたのだが、どうなっているのだろう、といぶかしく思うのである。
最近、今野さんが朝日俳壇の句を御自身のブログに掲載し、朝日新聞社とトラブルが起きた事を御報告頂いている。私も句集に関しては、不快な思いを経験している。
当たり前の礼儀、フェアーネスを越えた、不思議な世界の様である。