8日の夕暮れ時に、鴻巣花久の里・サロンで 「岩川光トリオ・ジャパンツアー2014」 が開催された。岩川光は、1年振りにアルゼンチンから一時帰国。二人の朋友、ピアノの林正樹、アコーディオンの佐藤芳明とのトリオで、全国11か所、弘前から岡山までのツアーを敢行している。昨日は生憎、アルディージャのホーム開幕戦であり応援に行きたかったのだが、アルディージャ6のメンバーにチケットを譲ってコンサートに参加した。
久し振りの光君は、相変わらずの大男で、変わらない笑顔である。多くのユニットを組んで音楽活動を遣って来たが、自身の名前を冠したトリオでのステージングは初めてと言う。1年の外国生活と音楽的充実が、今回のジャパンツアーと成ったのであろう。
基本的にケーナは民族楽器であり、アコーディオンも情緒的な音のする楽器だと思っている。ケーナもアコーディオンも、音そのものの中に意味と情況を抱えている。日本酒で私の言う 「ひね」 が本質的にあり、それが味わいと言う人もいるし、臭いと言う人もいる。そんなトリオのスタートの曲から私は、不思議な未体験ゾーンに投げ込まれてしまった。言うならば、圧倒的な知性の世界に導かれていた。
建築において、建て主と建築家、あるいは設計士は、立ち上げるべき建築の目的を建て主からの要求として全て受け入れ、生活、法令、技術、コスト、美観をクリアして、了解の中で図面と言う意図伝達図書、図面を完成させる。それを建設業社が、読み取りコストと技術を投入して建築物を完成させていく。とは言え、少なからず齟齬が起きる。建設業者としてこれ以上の無い努力と妥協をしてもである。
音楽においても、作曲者の意図が楽譜に表記され、そこから楽器が演奏されて音楽空間が創造される。今回、私は、神に愛でられた濁りの無い三人の音楽家を目の当たりにした。知性と精緻な同時性・シンクロニシティーに驚愕しながら、ピアノとアコーディオン、ケーナのトリオである事を忘れていたのである。建築に身を置く私は、羨ましい程に音楽の高邁さを彼らの中に感じた。彼らの音楽は、何も逆撫でせず、自然で快かった。まさに地球音楽と言われるものがあれば、こんなものなのだろうと思った程である。音楽を聴いたと言うよりも、しばし快い情況に我が身を沈めていた、と言う感じであった。だから、不快を起因とする 「癖になる違和感」 が全く無い。何か不足が有るとすれば、此処が一番の問題かも知れない、と思った程である。
プログラムの中に、アコーディオンの佐藤芳明氏作曲と言う、カノンをテーマにした曲があった。昨日も、そして今週も厳しい冷え込みが続くと言う。カノン、と言う曲と言葉に触発されて句を詠んだ。
突き放す四温三寒にこのカノン 幻椏