本日の日経俳壇、黒田杏子選に入選していた。
兜太の地原野では無し合歓の花 幻椏
我が句友、山本素竹氏の書を題字に使った金子兜太先生の第14句集が、「日常」である。2000年から2008年の句を集めたものであり、この間104歳の御母堂様を送り、奥様を見送っている。
帯には後書から、「この日常に即する生活姿勢によって、踏みしめる足下の土が更にしたたかに身にしみてもきた。郷里秩父への思いも行き来も深まる。徒に構えず生生しく有る事、その宜しさを思うようになる。文人面は嫌。一茶の
荒凡夫でゆきたい。その
愚を美に転じていた〈生きもの感覚〉を育ててゆきたいとも願う。アニミズムということを本気で思っている。」 と書かれてある。
御本人は自ら1度も前衛と言った事は無いと言うが、戦後現代俳句における前衛俳句というムーヴメントを先頭で牽引して来た先生の印象から、豪放磊落、豪胆な野武士、と評される事が多い。勿論、今日までの俳句作家として第一線で活躍し続ける中で、秩父人独特のその強靭な剛直さと期待に応え様とするサービス精神を強化なされて来たと思うが、直接御厚誼を頂く中で私は、先生の本質はリリシズムに裏打ちされた優しさである、と強く感じている。
句集「日常」の中で、その感性の極みが 「
合歓の花君と別れてうろつくよ」 と言う句である。初めて目にした時、これこそ金子兜太だと、強い印象を得たのである。最近、何度目かの兜太ブームが起きている。だからこその、我が一句なのである。
私にとって、日経俳壇に御取り頂いた事は、この上なく有り難い事である。金子先生に対する我が思いを、表出出来た事と共に、「兜太語る」の共著者 黒田先生にも私の思いを御了解頂いたのであるから、嬉しいのである。