謹賀新年
皆様に於かれましては、恙無く新年をお迎えの事と存じます。
昨年は、戦後七〇年と言う節目の年であった。時代の中で育まれて来た不戦思想とシステムは、安保法案の国会通過により、大きな転換期を迎えた。この事で戦争国家にすぐに移行するとも思わぬが、国際社会における日本の責任の明確化がなされ、新たな時代がスタートした、と思っている。
そして、建設業界における杭工事偽装問題は、直接性を持った問題として多くの事を考えさせられた。先ず問題の発覚と共に、受注業者の受注責任が一切語られぬままに、二次下請け、三次下請け、在ろう事か施工者個人の誹謗に向かった異常さと共に、責任転嫁の応酬に終始した事態は驚き以外の何物でもなかった。問題の本質究明も無いままに、杭騒動として報道するマスメディアの姿勢にも不快感を覚えたし、販売会社は逸早く全棟建て替えを住民に提示したこの態度にも、建築に携わる者として強い違和感を覚えた。明確な実態の調査と評価の確定以前の発言に、資本の過剰な横暴を見た思いがする。建設職人の誇りと責任に裏打ちされた仕事に対する冒瀆、と言わざるを得ない。我々地方工務店には、そんな経済的余力も無く「手戻りの無い仕事」を懸命に求め、確りとした施工管理と信頼のおける協力業者との協働を行って来た。建築とは「情の積み上げ」と、私は認識している。心を込めて大切に積み上げて来た仕事を、資本の論理と責任転嫁で簡単に壊されてはたまったものではない。
今回の一連の問題は、資本力や組織の大きさ如何に関わらず、建築に対する人間力の問題で有る事を如実に明白化した、と思っている。我々は、だからこそ責任を全うして来たし、今後も変わりなく地域の中で生きて行きたい。まだまだこの先時代の不透明感はぬぐいきれないが、私達の仕事振りを、確り見て頂きたいと願うばかりである。
本年我が社は、創業93年を迎える。100年企業を目指し、『地域に暮らし・地球に生きる』と言う地方工務店の矜持を持って高品位な建築を創造する事を基本に、御客様には「一層の信頼と満足」を、関係協力業社とは「責任の明確化と協働による品質向上」を求めて参りたい。
本年も、旧倍に増しまして変わり無い御指導御鞭撻を、心より御願い申し上げます。