考(ちち)の書斎は、現在 娘・真緒のワーキングルームになっている。その部屋には今日、誰も弾かなくなったピアノも置かれていているのだが、孫達のためにリビングルームにそのピアノを引き出そうと言う事に成った。
掃除、整理の不得意な娘が、可愛い甥っ子のためにピアノ移動のための準備を始めた。この部屋には床から天井まで壁一面の書架が作り付けられている。そこには、父の蒐集した沢山の本と、私の書棚から溢れ出た雑誌など、思えば2003年に父を送って以来手付かずのままある本の整理から始めると言う。娘なりに残すものと処分するものは彼女の判断で選別し、長男の嫁がそのヘルプに入った。私に意見を聞くと片付くものも片付かないと言う事で声も掛からず、だから基本的に私は口出しをせずにいた。
とは言え、大胆にも廃棄処分された本の中から昨日今日と、私は貴重本のレスキュ―を行っている。すでに私の書架にも余裕が無いので、多くを放棄しなくてはならない現実も有るのだが、結構な量の本を拾い上げた。きっとこれからも開く事も無いと思われる「新篇武蔵風土記稿」分厚い1~8巻、膨大な仏教関係の書籍の中から捨て難いものなどをレスキュ―した。その中に、娘達にとっては見た目の古臭さだけで、何の確認もためらいも無く廃棄されたものである事は充分に想像出来る古びて型も崩れた2冊の本を拾い上げた。
「詩集智恵子抄」 高村光太郎 と「繪はがき」 堀辰雄小品集 の初版本である。娘には嫌われそうだが、レスキュー作業もまんざら悪くない、と私は思っている。
蛇足ながら、「考妣」と書いて 亡くなった父母 を言う。