不思議な夢だった。
極めて安易な実験が連鎖拡大して巨大なパニックを引き起こす。夢の曖昧さを持ちながらも、目覚めても消えない幾つかのシーンを覚えている。科学実験は、大気汚染に反応して大爆発を起こす。地球が赤い炎で包まれる宇宙風景、強い酸性雨が降り出しその雨に当たるとピリピリと痛い。硫酸のH2SO4の分子式が降って来て、建築を侵食、倒壊が始まる。押し潰される人間の顔のアップ。我が鉄筋コンクリート壁式構造の住宅はこの硫酸にはひとたまりも無いと心配している私が居て、友人の雑然とした部屋に助けを求める。初老の奥様は何故か優しく美しく、我が救出を何とも甲斐甲斐しく手助けをしてくれている。騒然とした風景のディテールは極めて明瞭で、私は慌ただしく動く美しい婦人をじーと見詰めている。すでに初老の婦人と見詰めている女性とは人格が違っていて、別人のようでもある。いつしか気が付くと私は逃げ惑う手に、偽札の入った大きなバックを持っていて、この混乱の中で使えば、きっとばれないだろうと思っている。「熊谷で偽札発見」の新聞記事がインターポーズされ、犯罪者の罪意識が拭えぬほどにべっとりと我が身に付着する。「経済至上主義が環境を破壊し、環境破壊は偽札で私の命まで奪おうとしている」 と叫びながら逃げ出そうとしても体が重く、手足が痺れ動かない。建築の倒壊は続き、茶髪の女性の圧迫された顔のアップが何度と無く繰り返される。圧死する人の中には家族も友人も居ない。皆生きている、と安堵している私と、偽札に翻弄される私が同時に立っている。
そんな夢だった。