凍て瀧の登らんとする気迫かな 幻椏
花ほころぶこの季節に冬の季語で恐縮なのだが、上記掲句が本日の朝日俳壇・金子兜太選次席で御取り頂いたので、 「季語ー10」 とさせて頂く事にした。
昔、那智の瀧を訪れ 見上げた時に、その壮大さと荘厳さに心打たれた。後藤夜半の「瀧の上に水現れて落ちにけり」という有名な句があるが、その時の瀧は落ちていなかった。天に向って上昇をしている様に見えて、眩暈を覚えた事を忘れない。以来 瀧は、水の落下と共にその景全体を上昇させる力を内在している、と思い続けている。
「凍て瀧」は、厳冬に氷結した瀧を言い、当然冬を代表する季語である。ちなみに凍ての無い「瀧・滝」は夏の季語となる。物理的に落下を静止された水は、エネルギィーを内在して季節の結晶として眼前に現れる。まさにこの瀧は、白龍であり、私はそこに強い上昇の気運を感じずには居られないのである。
金子先生の句評に 「中七下五の把握に充分な実感があり、その分厳しい。自分への励ましもあろうか」 とあった。酷く落ち込んでいた昨日今日、先生のお言葉に大いに励まされている私を感じている。