小栗康平監督「泥の河」の脚本家、として名の在るシナリオライター重森孝子さんから 「時田さん、ホモっ気が有るんじゃあない・・」 と随分昔に言われた事を思い出す。勿論そんな気は、毛頭無い事は御存知での戯言だったのだが、今回の「美少年問題」は、戯言としては捨て置けない。
全国的に有名な美少年酒造の問題である。事故米が注目されていた時、「美少年」が事故米を使っているとの報道に、酷く吃驚した。権田社長も、「あれほどの蔵が、そう言うことが出来てしまう感性、良識の無さがショックですよね・・」 としみじみ言っていた。過日もこのブログに書いたが、私達は自分の実感・感覚以上に情報に左右されている。「有名蔵のこの酒が美味い」と言う情報は、確かにそれだけの努力と技術があるから評価を獲得出来たと思う。その獲得した評価を維持する為に、実は血の滲む努力が必要である。その実体は権田酒造を近くに見続ける事でよく理解している。決して大きくない蔵が、顔の見える「直実」の愛飲家の為に、どれ程の努力と我慢をしているか、私は良く知っている。彼だけで無く、私も、私の近しい友人達も、厳しいこの時代にどこまでフェアネスを持続出来るか、必死で頑張っているのである。
今回、更に加えて裏金問題まで出て来た。本来使うはずの酒米を安価な米に差し替え、その差額を裏金として受け取り、苦しい経営に回して来たと言う。何とも身につまされる話だが、日本を代表する「美少年」のやる事では無い。彼らに、美少年を買い求める客の顔も見えていないし、客も情報で飲んでいる、と言う事に成ってしまう。この事件が、情報として伝播された結果が、誠実に酒作りをしている蔵にどれほど多くのダメージを与えるか、加えて酒税法整備への議論の展開、アルコール添加をする本醸造酒の本来の価値さえ飛んでしまう事態に陥っている。極めて短絡的な反応に、私はいささか残念な気持で居る。
何だか、他人事でなく哀しく成って来た。権田社長、「ごんちゃん」のあの笑顔の価値と意味を、そして何よりも自分の舌で「直実」を味わって頂きたいと思うのである。5月には、今年も蔵で唎酒会を開催させて頂こうと思っている。
今年は屋上ビオトープから、我が家の庭の花を御報告したいと考えていた。そんな矢先の事件である。今日は、ひとつだけお気持直しに椿の写真をアップさせて頂く。丸く、律儀な花弁が美しい。