2011年度の朝日俳壇入選句を纏めた 「朝日俳壇2012」 がそろそろ出版されるだろうと思い、懇意にしている本屋さんに予約のお願いに行った。何気なく書棚を見ると、既に並んでいたので、直ぐに購入。選者の選択とコメント以外著作料はゼロと言う朝日俳壇入選句を纏めただけの本としては、2800円に消費税、2940円と言う書籍代は何とも高額である。これだけのコストを払えば新鮮で奥深い知識を頂ける本が沢山あると思いながらも、初入選の2000年以来、我が書架には確りとバックナンバーが並んでいる。昨年は、購入しながら紛失、何処に忘れたか、我が家の何処かに押し挟まっているのかも知れないが、やむなく2冊目を買った。悔しくもあり、何とも残念な事である。
昨年1年の金子兜太選 年間秀句は、以下10句である。
懸大根ラファエロのふくよかさかな 河合 清
初夢や一直線の獣道 野崎憲子
冬眠のとぐろの芯を夢といふ 三方 元
湯たんぽも母も単純明快なり 伊佐利子
誰が統(す)
ぶやこの荒涼の春の惨 加藤 宙
福島は暗黒大陸桜咲く 岡崎正宏
フクシマの哀れ桃の実色づくよ 兼谷木実子
樹下に居て天思う音梅雨に入る 時田幻椏
三陸の行方不明に秋の闇 足立戚宏
霧の景割れてきらきら露の景 内野 修
金子先生の 年間感想 は、以下の様に綴られていた。
「東日本大震災を対象にした好作品が現れたのは4月18日発表の加藤宙からだったが、足立戚宏の作品までつづき、あと哀痛の念を内野修、フクシマの苦しみを事実に即して兼谷木実子が書きとっていた。ここに、早い時期に岡崎正宏が「福島は暗黒大陸」だ、と書き切ったことへの反撥乃至大袈裟過ぎるとした投書があったが、間も無く消えた。事実が証明したわけで、私は岡崎の大胆な直言に感心している。
そのなかで年間賞に時田幻椏の作品を選んだのは、今次災害を深く思いやって、それこそ天にまで到るその腰の据え方に感心したからである。「天思う音」が言い得ていた。」
有り難くも、身に余る句評を頂いた。只々、この句を授かった幸運を思うのである。