有難くも「はいくらぶ」に我が句を御掲載頂いた。
季語 高きに登る/登高 【秋】 生活 行事
重陽。旧暦の9月9日は、2021年10月14日
俳句&エッセイ: 時田幻椏
ナレーション: 八神てんきゅう
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BGM: おとわび https://otowabi.com
北野淳 https://kitanojun.jimdofree.com/
Edit: 中原久遠
5節句の一つ旧暦9月9日の「重陽」を、古くは「菊の節句」と呼んでいた。酒に菊の花弁を浮かべて飲む秋の宴、これが菊酒であり、菊の宴である。
中国の古俗に、重陽に茱萸(ぐみ)を詰めた袋を提げて高丘に登り、菊酒を飲むと災いを祓い長寿に成れると言い伝えられて来た。これを「登高」と言い、「高きに登る」は秋の季語に成っている。
古俗を踏まえて俳人は、何処をどう登るかと言う想像力の中で「登高」を新たな季語として捉え直す事が出来ると思っている。
秋の日に、白いシーツに包まってうたた寝をする。夢に魚となって登高すれば、浮遊感と開放感の中に至極の微睡を得る。秋の転寝心地良し、である。
可能ならば、遠くから聞こえる井上陽水のリバーサイドホテルが宜しい。全てを放念し、眠る身に沁み込む歌をそっと抱えれば、秋の微睡はこの上なく豊饒なものに成るのである。 (幻椏)
追記 : 井上陽水の「リバーサイドホテル」は一筋縄ではいかぬラブソングである。イーグルスの「ホテルカリフォルニア」に触発されてリメイクした曲と聞く。美しいメロディーと共に、イーグルスの歌と同様にミステリアスな歌詞が何気ない言葉で意味深く並ぶ。カリフォルニアのホテルから彼岸のホテルへと舞台は飛んで、陽水の世界が展開する。このイメージの飛躍が、陽水の凄いところである。
美しいメロディーに酔いしれるだけでは終わらないこの歌を意識して、登高の句を詠んだ。
登高と言う健康で健全な行事の中に、情死と言う純粋な陽水の世界には及ばぬものの、影を持つ生のエロティシズムを少しでも抱えられたら、と思っていた。
この句は2004年10月,朝日俳壇・金子兜太選の主席に御取り頂いている。我が拙句を確りと受け止めて下さった金子先生との幸運な出会い、と今回こうしてこの機会を頂き、改めてその偉大さに恐れ入るばかりなのである。