川沿い作品展を終えて、評価と新たなエネルギィーの生成が始まっている。
過日、建築学会埼玉支部役員会で、川沿い作品展に参加頂いた樋口さんから報告と提案がなされた。川沿い作品展の、住民の自発性と外を頼らない外の手の入っていない自立性を高く評価頂き、学会としてこのモデルを正しく評価伝達する事で、県内各地の新たなまちづくり・地域づくりのサポートをしたい、と言うものであった。上田県知事2期目のメインテーマを「川」とする事が発表された。このコンセプトの起草者である樋口さんの、大河は勿論、小さな用水にまで目配りをする視野の確かさとセンシティビティーに只々敬服するばかりである。
そして、この川沿い作品展で出会いを頂いた龍前貞夫さんとの新たな関係である。龍前さんは詩人で、俳句をたしなみ、教職を引退された後は油絵も始めた方である。御自宅をギャラリィーにして、川沿い作品展に参加している。お近くでありながら中々お話をする機会も無いままに居たのだが、今回思わず俳句の話になり、我が拙著「我貌」を恐縮ながら贈らせて頂いた。有難くも今日、5ページにわたるお手紙を頂いた。句集「我貌」から10句をお選び頂き、それぞれに丁重な句評が添えられている。すでに随分な時間の経過のあるそれぞれの句を得たその時を、最短詩形俳句の不思議な力なのか、鮮やかに思い出す事が出来る。龍前さんの句評は、我が句を圧倒し超えて、10編の龍前さんの詩論に成っている。改めて、自作句を発表する事の重大さを知らしめられ、恐怖さえ覚える。我が手から離れ、龍前さんに選ばれた10句は極めて幸せである。そして我が未熟さを改めて実感している。その幸運な10句は
杉の木の尖んがり増して秋の山
一浪を告げ来る春の缶ビール
青柿の落つるも確たる形して
飛石や誰の歩幅か冬の路地
指笛の初めて鳴りて夏に入る
死にたれば人来ていとふ冬の通夜
動かずも時負ふ時計冬眠す
寝て見れば夏空だけの院の窓
汗ぬぐうタオル大きく歳を取る
夏蝶の島を出て飛ぶ海を飛ぶ 幻椏
龍前さん、ありがとう御座いました。今後ともご指導宜しくお願いいたします。