古くから大変御交誼頂いている 前橋工科大学大学院教授 樫野紀元先生が、日本建築学会機関紙「建築雑誌・07号」に、「建築分野の気の科学」と題する論文を発表していた。先生には、我が荒川塾にも御出で頂いているし、銀遊句会のお仲間でもある。
「気は自然界に生命力をもたらす一種のエネルギィーを言い、気は人の生命活動のもとである。一般に、人の手が多く投入されるほどつくられたものに、多くの気が込められる。このことは古今東西の思想の書でも解説されており、最近では脳科学や、サイコ・サイバネックスの分野で研究の対象になっている。
建築をつくるとき、気が多く込められるほど、その建築は人に心地よさと活力を与え、長期耐用の良好な社会資本としての価値を高める。」 という前文で綴られた興味深い論を拝読した。
私は、「建築は人の心を積み上げて創るもの」 と常々思って来た。クライアントの思い、それを受けて設計者の思い、そして何よりも各職人の技と心を積み上げて創るものでなくては成らない。これらの思いを積み上げてこそ、価値在る建築に成る。私は、建築を業として35年、一切ぶれる事無くひたすらにこの事を念じて努めて来たと思っている。正に、我が思いを改めて確認させて頂く樫野先生の論であった。
思えば、200年民家の改修工事は、この論の極みとして在る。居として大切に住み継がれて来た民家には、この気が充満し,染み付いている。クライアントはその事を充分に理解し、再生修復を御決意されたに違いない。民家改修の現場は、すっかり歪みを取り直し、基礎・土台がやり直され、柱・貫の補修補強が済んでいた。200年の命を更に100年、200年と言う未来に生かそうと言う我が社のスタッフ、アルボックスコアの職人の皆さんの強い心を実感できる現場である。正に、完成すれば気の満ちた気持ちの良い住居建築になるに違いない。
真に、嬉しい仕事を頂いた。感謝と共に、心を込めて確りと創り上げたいと念じている。完成が待ち遠しいものである。
「アルボックス時田の現場ブログ」