一枝に空蝉五個の蝉時雨 幻椏
地下に数年棲息する蝉の幼虫はやがて成長して蛹と成り、地上に這い出して、背を割り殻を脱ぎ捨てて蝉と成る。その抜け殻を空蝉と言う。我が庭の木々の枝にしがみついた空蝉を多く見かける。随分とよじ登り、高い木の枝の先に在るのもあれば、地から這い出て間も無く成虫に成ったものもいる。数多の空蝉を見付けながらも、木に登る蛹を見た事が無い。実は、夜の闇に隠れて成虫に成ると言う。
蝉の季語は夏である。傍題の油蝉、みんみん、唖蝉、蝉時雨も夏、空蝉も夏の季語である。が、季節を越えて、年を越えて,、変わらずしがみつく空蝉を見付けると 「うつせみ」 の語感のままに特別の感慨を持つものである。掲句は、厳密に言えば季重なりであるが、重複させる事で蝉時雨の大きさ臨場感を獲得したいと思っていたのかも知れない。 (選者金子兜太先生からは 「上5中7の誇張した措辞が巧みに虚を伝える。」 との句評を頂いている。)
立秋を過ぎ、すでに季節は秋なのだが、蝉時雨は相変らずである。が、最近、法師蝉の声が混じって来た。連日の猛暑が続きながらも、確実に季節は動いている。ちなみに つくつくほうしの季語は秋である。