一昨日大野百樹先生から、再興第93回院展へ出品の 「月」 が文部科学大臣賞受賞 と言う嬉しいお知らせを頂いた。すでに秋の院展の御招待状も頂いていたので、早速上野の都美術館に行って来た。
先ず、疲れない内に先生の作品を拝見したいと思い、展示室に急いだ。院展風な多くの作品と異彩を放って [月」 は超然と在った。
陰である月が、明度の高いブルーで描かれている。昨年の大画面一杯に薄野を描いた 「秋韻」 以上に彩度も明度も上がっている。ライフワークとして描き続けて来た山岳は、どれも強い輪郭線を持ち、その内に精緻な点描で山の命を描き出していたが、この所その方向が大きく変わってきた事を思う。画面に1点として明度の低い暗い色が無いのである。ここに先生の充実と衰えを知らない若い命を感じさせて頂いた。
組織展に1つの傾向の現れる事は仕方ない事である、と私も理解する。有名同人作家の作品以上に、初入選の作品群を注目して見たが、残念ながら院展風を凌駕し新鮮な感動を触発する作家がいなかったのも事実である。改めて、大野先生の院展に於ける存在意義と価値を知らしめられた展覧会であった。
益々の御健勝と御活躍を、御祈念申し上げます。