過日11月26日、このS邸の社内検査を行なった。私を含め5人の検査員の入念なチェックが行なわれた。11月6日「処女作」というタイトルでアップした住宅である。私は、明快なプランとおおらかな空間を持つこの住宅の完成を見て他人事ならず嬉しかった。が、社内検査は、容赦無い。丁寧な施工であるから基本的な問題は無いのだが、建具の吊り込み立付け、壁の汚れ、器具の取り付け具合から、コーキング、直接眼に見えない部分は、伸縮自在の柄を持つ検査用ミラーを使い隅々までチェックされる。ダメ部分は目印のテープが張られて行く。ここまでダメを出しているか、と私さえ感心するほどの厳しさである。検査後、現場監督を中心に、検査員5名から、それぞれの報告と感想が告げられ、書面に綴られる。ダメ工事を再度やり直し、完璧を期して引渡しとなる。
昨日は、その引渡しが行なわれた。プランから設計者自身もご一緒に暮らすと思っていたのだが、両親お2人為の住宅と言う。イメージが実空間になった感想をS氏に聞くと、十分な手応えと感動があるという。若い建築家の誕生である。御両親も、殊のほかの喜び様で、息子の仕事に満足している。私も、施工者としての責任を果たせたとの思いである。
施工者からクライアントに引き渡された住宅で、生活が始まる。楽しく豊かにお暮らし頂きたいと念じながら、この先の長い時間の中で、さまざまな気付きや発見があるだろう。今後も確りと施工者責任を果たして行くお約束をし、末長いお付き合いを確認させて頂いた。
S君、おめでとう。研鑚を積んで、更なる次作を期待しております。