24日、今年も「ものつくり大学」の卒業設計発表会に御案内頂き、オブザーバーとして参加させて頂いた。昨年に引き続き、私は計画系研究室の発表を拝見したが、テーマの豊富さとプレゼンテーションの向上に、更なる大学の充実を感じた。
「もの大」の建築技能工芸学科は、建築に於ける様々な技術を経験し身体化する事を通して建築を学ぶと言う、極めて特徴あるカリキュラムを持っている。この環境が功を奏し、面白い人材を育てて居る事を今年も実感し、更に際立った個性を育んでいる。
例えば、栗原由貴さんの「ちっちゃなアトリエの製作」は、大学で学んだ全てを動員して自宅に日曜大工を趣味にしている父上と2人で2層屋上テラスを持つアトリエを実際に作り上げてしまった驚異の作品。このリアリティーとロマンティシズム、爆発的なパワーに感動さえ覚えた。デザインもコンセプシャルで、美しい。こう言う学生を育てた大学の自信は、又娘を「もの大」に入学をさせた両親の喜びは、共にいかばかりかと思う。やはり、時代は女性なのだ と実感させられた。それから、池田達彦君の「見つける喜び」、酒井貴充君の「michi~みんなの時間と場所~」など、ナイーヴな身体感覚をベースに、純粋に思考を積み上げていく健康な感性を好ましく思い、中村新之助君の「Encounter Site」や野中恒孝君の「GYOUDA CONJUNCTION」の作品に誠実な学びとデザインへの希求を感じた。また、千田卓君の「My shoool zone」、安倍寛之君の「『結界』を用いた学生会館の提案」などにも日常生活に対する公平な精神や拘りに好感を持った。午後1時半から6時までという思えば随分と長丁場だったが、あっという間に時間は過ぎた。
発表会終了後、懇親会にも参加させて頂いて、親しく成った2人の学生と、深く語り合う事が出来た。何故ものつくり大学を選んだかの問いに、「既存のヒエラルキィーを感じない大学だったから・・」と言う答が返ってきた。彼らの父親よりも年上の私に、クリアーに自分の考えを述べ、また確りと私の話も聞く。礼儀正しく、フェアーで、スマートな2人だった。混迷の次なる時代は、彼ら若者が支えていくのだろうと、新しい世代の誕生を強く想う程であった。こう言う新たな感性を迎える教授陣の教育力と人間力が、もしかしたら、今日の「ものつくり大学」の1番の問題なのかも知れない、とも感じていた。
良い時間を頂いた事への深甚なる感謝と、学生諸君らの更なる充実と活躍を、心から期待したいと思う。